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子ども時代の療育こそ必要…急増する「放デイ」ニーズの裏で横行する不正。「毎日使えてこそ」自治体格差への疑問も
発達障害の子どもたちへの指導や支援を含めた特別支援教育がスタートして今年で18年目となる。学校関係者や保護者らに広く知られるようになり、特別支援学級などで学ぶ児童生徒は急増。教員不足や学びの質といった課題も見えてきた。鹿児島県内の現状を報告する。(シリーズ・かわる学びや@鹿児島~特別支援教育の今=10回続きの⑧より)
「こんにちはー」。平日の午後3時半すぎ、鹿児島市の児童発達支援・放課後等デイサービス(放デイ)「グッジョブリズム」に、学校帰りの児童たちが元気よくやって来た。
スタッフが合図すると、子どもたちは軽快な音楽に合わせ、動物のまねなどをしながら体を動かす。楽しげな雰囲気に、初めは乗り気でなかった子も輪に加わった。音楽療育の一環だ。
利用を始めて3年目の小学4年男児は、軽度の知的障害があり、運動が苦手だった。理学療法士や作業療法士の資格を持つスタッフからボール遊びなどを通して体の動かし方を教わり、走ることが大好きになった。母親(42)は「気になることや悩みをすぐに相談できて、とても助かっている」と感謝する。
運営するサクラバイオの宮之原綾子社長(48)が、障害福祉サービス事業を始めたのは8年前。最初は大人の就労支援だけだったが、生きづらさから精神疾患を抱える人が多く、子ども時代からの療育や支援の必要性を痛感した。
音楽特化型や運動特化型といった放デイなど11事業所を営む。「特性を含めて自分をきちんと理解し、自己肯定感を育むサポートを大切にしている。学校、家庭、医療・福祉をつなぐ役割を担いたい」と話す。
◇ 児童福祉法の一部改正で、放デイがスタートしたのは2012年。特別支援教育を受ける児童生徒の増加と軌を一にして、事業所、利用者ともに伸びている。県障害福祉課によると、県内では13年4月時点で62カ所だった事業所が、24年4月時点では598カ所に。支給決定者は13年度の1594人から23年度は8503人と5.3倍となった。 急増はゆがみも生んだ。利益優先とみられる放デイがあるほか、「預かっているだけ」といった質の低い事業所も現れ、全国的に問題視されている。虐待やわいせつ行為も各地で発覚。公費の不正請求も相次ぎ、県内でも10月、指定を取り消された事業所があった。
◇ 地域の偏りも大きい。県内事業所の5割に当たる300カ所が鹿児島市に集中する一方で、一つもない町村もある。サービスを利用できる日数判定も自治体間でばらつきがあり、不公平感を生んでいる。
「障害のある子どもの放課後保障全国連絡会」の真崎尭司事務局次長(41)によると、月5日に制限する自治体もあれば、20日以上認めるところもあるという。「学童保育は毎日利用できるのに、障害があるが故に自治体判断で制限されるのはおかしい」と指摘。質の向上のため、放デイ職員向けの自治体研修制度もつくるべきだと訴えた。
◇障害児通所支援とは 障害がある児童生徒らを放課後や長期休暇中に預かり、訓練や交流機会を提供する放課後等デイサービスのほか、主に未就学児らに療育支援をする児童発達支援センター、児童発達支援事業所がある。利用料は原則、利用者が1割負担(所得に応じて上限あり)。残りは国や自治体の公費で賄われる。鹿児島市には市独自の支援制度があり、利用者負担ゼロとなっている。昨年9月、市は助成の在り方を検討する方針を示したが、保護者らでつくる市民団体が今年9月までに2万人を超える署名を提出し、結論は先送りとなった。
11月13日(水)6:03配信 南日本新聞/鹿児島